食品添加物ホントのトコ

食品表示の「一括表示」はなぜ存在する?:科学的な視点からその意味と見方を解説

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食品表示の「一括表示」とは何でしょうか

スーパーマーケットなどで食品を購入する際、商品の裏側に表示されている原材料名や食品添加物のリストをご覧になることは多いでしょう。その中で、「調味料(アミノ酸等)」や「乳化剤」といった表記を目にすることがあるかと思います。これらは「一括表示」と呼ばれる食品添加物の表示方法の一つです。

「一括表示」とは、食品衛生法に基づく食品表示基準において、特定の食品添加物グループに対して、個別の名称ではなく、その用途名と主要な添加物の名称をまとめて表示することが認められている制度のことです。例えば、「調味料」という用途名で「アミノ酸等」と記されていれば、複数のアミノ酸系調味料が使用されていることを示しています。この制度は、消費者の皆様に分かりやすい表示を提供すること、そして表示欄の限られたスペースを有効活用することを目的に導入されています。

なぜ「一括表示」が許されているのでしょうか

食品添加物には、食品の品質保持や加工の効率化、おいしさの向上など、様々な目的で使用されるものがあります。例えば、食品の色や風味を調整する「着色料」や「香料」、食品の酸化を防ぐ「酸化防止剤」、微生物の増殖を抑える「保存料」など、その種類は多岐にわたります。

これらの中には、化学的な構造や機能がよく似ており、食品の中で同様の働きをする添加物が複数存在するケースがあります。例えば、アミノ酸系の調味料だけでも多くの種類が存在し、これらを全て個別の名称で記載すると、表示が非常に長くなり、かえって読みにくくなる可能性があります。

そこで、国は科学的な評価に基づき、特定の用途を持つ食品添加物について、用途名と代表的な物質名を併記する「一括表示」を認めています。これは、表示の簡素化を図りつつ、消費者が添加物の「機能」や「種類」を把握できるようにするための合理的な措置と言えます。

「一括表示」されている食品添加物の安全性は大丈夫でしょうか

「一括表示」がされているからといって、その安全性が軽視されているわけではありません。日本で食品添加物として使用が認められている物質は、食品安全委員会による科学的な評価を受け、人の健康に悪影響を及ぼさないことが確認されたものに限られます。これは個別の名称で表示されている添加物も、「一括表示」されている添加物も同様です。

「一括表示」は、あくまで表示方法に関するルールであり、個々の食品添加物の安全性評価の基準とは直接関係ありません。例えば、「調味料(アミノ酸等)」として表示されている場合でも、その中に含まれる全てのアミノ酸系調味料は、それぞれが個別に安全性が確認され、使用基準が定められています。

私たちが日々の食生活において、どの食品を選ぶか判断する際、この「一括表示」について正しく理解しておくことは非常に重要です。漠然とした不安を感じるのではなく、科学的な根拠に基づいた情報を知ることで、より賢明な選択ができるようになります。

日々の買い物で「一括表示」をどう見たら良いでしょうか

「一括表示」されている食品添加物を見たときに、どのように判断すれば良いか、具体的なヒントをいくつかご紹介します。

  1. 「何のために使われているか」に注目する 「調味料」「酸味料」「乳化剤」といった用途名に着目してください。これらの表示は、その食品にどのような機能を持つ添加物が使われているのかを示しています。例えば、「調味料」は味を調えるため、「酸味料」は酸味を加えるため、といった具合です。特定の機能を持つ添加物を避けたい場合は、用途名を参考にすることができます。

  2. 安全性は国が確認していることを理解する 「一括表示」されている添加物も、個別に表示されている添加物と同様に、国が科学的根拠に基づいて安全性を確認し、使用基準を設けています。不必要に不安を感じる必要はありません。

  3. バランスの取れた食生活を心がける 特定の食品添加物を過剰に摂取することだけを心配するのではなく、日々の食生活全体のバランスを考えることが最も重要です。様々な種類の食品をバランス良く食べ、特定の食品に偏らない食生活を心がけることで、特定の添加物の摂取量が過度に増えることを避けることができます。

「一括表示」は、食品添加物の情報を効率的に伝えるための工夫の一つです。その意味を正しく理解し、日々の食生活に役立てていただければ幸いです。